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ゆるゆる演劇部のオカルト合宿
- 2010.09.20 Monday
- SS
- 16:15
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- by カトリ
【ゆるゆる演劇部のオカルト合宿】
演劇部の部室に「アレが出る」と聞いてから、正直俺はびく
ついていた。
夏が迫ってきて、期末テストなんてめんどくさくも胃の痛い行事も無事に終わり、あろう事か、部長が終業式の日に部員を集めて言った。
「明後日から部室で合宿をするのだぞ!!!」
部長の丸眼鏡は、「不参加は絶対認めん!」という事を物語り、ギラリ、と光っていた。
「むふふ。ビデオカメラなどを用意してきちゃいましたのですっ」
ツインテールに赤いリボン、天パで跳ねた茶色の髪を踊らせながら、後輩の知加子が俺の所にとてとてとやってきた。
「オーブとか映ってたらすごいのですよ!!」
あー……。ここにもいたよ、オカルト馬鹿が。
「環(たまき)ちゃんは、なんだか乗り気じゃなさそうなのですよー。どうしてですかー? いざとなったら助けてくれるはずの『王子様』なのにぃ……」
あぁ、そうだ。
確かに「俺は」この伝統ある雪白女子高校演劇部──唯一の「男役」だ、が……俺だって一応女なんだから、怖いものの一つや二つはある。
「環さんがいれば、恐怖の合宿も大丈夫ですよねっ!!」
ちょっと待て。
巫女服着て、黒髪なびかせながらなんかジャラジャラしたもん振り回してんのはっ……──!
「清香ぁああ!!! お前怖いんなら参加すんじゃねぇええ!!!」
「……え。だ、だって……参加しない方が、こ、怖くないです、か?」
う。
た、確かに……。
うちの白笹部長最強だからな……。
「はっ、馬鹿馬鹿しいっ!」
むぅ。その声は、愛実か。
「合宿すんだろ、合宿ー!! 合宿と言えば! プール! スイカ! 花火! ……と、相場が決まっている!」
「おい待て。なんだその小学生の絵日記の様な相場は……!」
「うっ、うっさいな! 合宿ってぇのはみんなでわいわいやるもんだろぉ?!」
つり目ではあるが、ハーフであるふわふわ金髪の愛実は、見た目からうちの部活のヒロインの座にいる訳だが……性格は、簡潔に言えば「ガキ大将」である。
ドサッ──
長テーブルに、花火セットの山。
おいおいおいおいおい……。
頭痛くなってきた。
「あれ? 花火はいいですけど……マッチとかはないんですか?」
「環がライター持ってるっしょ」
「持ってねぇええ!!!!」
そんな印象を後輩に植え付けるんじゃぁない!
「皆の者集まっておるか、大概暇人じゃのぉ」
あんたが一番暇人だっての。
てゆか、半分はあんたが怖くて集まったんだが……。
意気揚々と日本人形、鏡三つ、呪いのビデオなどなどを取り出す白笹部長。
髪は肩までの栗毛色で、見た目はそんなに悪くないのだが……この人の独特の感性についていけるものは、少ない(演劇のシナリオや演出にだけ発揮できるものと見てよし)
「おー、マッチあんじゃん! 部長! 花火しようぜ! 花火!!」
「ばっか!!! マッチは花火の為に持ってきたのではないっ。……これだこれ!」
と、
部長が取り出したるは、……白い、ロウソク──百本。
この人本気で百物語やる気だぞ、おい。
だ、誰か止めなければっ!!!
「おー。本格的ですー! 僕の用意したこっくりさんの紙なんて不用だったですねー」
「こっくりさんか。うむ。試してみてもいいぞ。あ。でもあれの本格的なやり方がそういえばあったな、……酒がいった様な気もするが……」
「花火ー!!!」
「お酒の代わりにこのお人形さんを置いてみてはいかがでしょう?」
「うむ、いいな。その後はしめ縄などが必要だったはずだがのう。……残念だ」
愛実の叫びは、オカルト好きの二人にかき消されてしまった。つーか限りなく無視に近い。
どっちかと言われれば、俺だって愛実の言った様な……ごくごく平和的な合宿をしたい。
演劇部──の合宿では最早ないけどな……。
「誰かに『一人かくれんぼ』やってもらいたいですー!」
「それは環にでもやってもらおうかのぉ……」
まってぇええええいいいい!!!!!!
「なんだ、そのなんか『一人』とか、なんかすっごく怖い響きだぞ!!!」
「怖いですよー。実況スレッドとか本当に出てきたりしてたですよー」
「あんなのは、釣りだろう?」
「えー。でも塩水含み忘れて明け方までガクブルしてた人のスレッドは怖かったですー」
「まあ、一人かくれんぼは浴槽がないしな……また今度やるとしよう」
よ、良かった……。
危うく、なんかすっげぇ怖い呪術の餌食になるとこだった……。
てか塩水とか浴槽とかなんだよ……。
さ、寒気……。
「部長、俺悪寒がしてきたので帰ります。風邪かなーぁ」
「そうか。じゃあ『一人かくれんぼ』を実況するように。やり方が分からないなら事細かにメールしてやろう。これは部長命令だ」
鬼だ……、本物の鬼がここにいる……。
がっくりうなだれてる俺の肩を、愛実が叩いた。
「あのさー、きたろーの親父見てたらさぁ、目玉焼きにしたくなんね?」
鬼部長と鋼鉄のハートを持つヒロイン……。
まともなのは、俺、一人?
泣きたい……。
百本のロウソクは当たり前だが、用務員のおじさんに見つかって没収されてしまった。マッチもだ。
薄暗くなってきた部室……。
テーブルの上には、こっくりさんの紙と、日本人形と、さっきコンビニで買ってきた(というか、外見でいける! と、買わされた)ワンカップの酒を用意して、部員全員ゴクリ、としている(愛実だけは平然としていたが……)
「では、行きますですよー?」
知加子が十円玉を手に、キリリと全員を見回す。
可愛い丸文字とハートが無駄に飛び交っているこっくりさんの用紙は低級霊すら呼べないんじゃないか、と少し思ったが……何しろ部長が持ってきた日本人形が怖すぎる上に、その後ろにあろう事か、鏡を三つ立てて三面鏡にしている。
それだけで、ハッキリ言って、怖い。
こっくりさんなんてしなくても、これだけで何かを呼べそうだ。というか、もうなんかこの人形の中に何か入ってるとしか思えない。
「じゃ、全員指を出せ、十円玉の上に置くがいい」
部長命令の元、知加子、清香、俺、愛実、部長──全員の指が特大ハートの上にある十円玉の上に指を置いた。
「う、うぅ……や、やっぱりやめましょーよー」
「神社の娘だと言うに、何を怖がっておるのだ清香」
「じ、神社の娘だからこそ、怖いんです……」
清香がちらちら見てる日本人形──もしかしたら、あれ、ホントに何かの曰くがあるんじゃないか?
無駄な冷や汗をかきながらも、知加子が唱えだしたので、全員つられて「こっくりさん」の名前を連呼し出した。
「降りてきたら返事して下さいです」
十円玉が滑らかに動く、全員が「おぉおっ!」と声を上げた。
答えは「はい」だった。
「で、何を聞こうかのぉ?」
部長の身も蓋もない一言に、全員が絶句した。
「人形に降りてきてもらうとかですかねぇ?」
知加子ぉおおお!!! それだけはやめてくれぇええ!!!
俺と同じ様に清香もぶんぶんと首を振っている。
「こっくりさん、これから何やったらいいですか?」
オタオタしている俺たちを尻目に愛実が聞いた。
十円玉は、するする動く。
「は」「な」「び」
したり顔の愛実を見て、俺はほっとした。
なんだ、そうだったのか……。
「んじゃ、とっとと帰って下さい」
「わ」「か」「っ」「た」
「はい帰ったー!!! 花火すんぞ! 花火!!!」
「ちょっ! 愛実先輩ずるいですですー!! これじゃあホントのこっくりさんじゃないですよぉ!」
「うっさい。狐は帰った。さぁ花火をやろうじゃないか」
あ。こっくりさんが「狐」だっていう知識はあったんだな、一応……。
てゆか……花火の量、増えてないか?
「れっつ! 花火!!!」
愛実の一声で、オカルト好き二人も渋々首を縦に振った。
全く、「ガキ大将ここに在りき」だな……。
校庭に出ると、外は真っ暗だったが、星がスゴかった。
「うおー、すげぇー!」
思わず感嘆の声を漏らすと、知加子がつつつつ、と俺に寄ってきて、いきなり腕を組んできた。
「……は?」
「知加子、夢だったんです!! 星空の下で王子様と二人きりー!!」
いやいやいやいやいやいやいや。
ちょっと待ってくれ。
確かに俺の外見はいわゆるヅカっぽく見えるだろう。
親衛隊もあるし、いやな、だからと言ってな──まさかの伏兵だ。親衛隊も見つけたらダッシュで逃げていたと言うのに……。
ボコッ!
いきなり、打ち上げ花火の筒を投げつけられ、顔面にヒットした。
更にどんどこそれらがこっちに降ってくる。
「ま、愛実ぃいいい!!!」
「打ち上げ怖いから、環つけてー」
さっきのコンビニで買ったのだろう。全く用意周到である。
最後に投げつけられたライターを受け取ると、俺は打ち上げ花火を並べ、一つずつ、ライターから火を点けた。
「上がるぞー!!!」
いつのまにか、みんなと一緒にわいわい花火をしていた知加子もこちらに振り返った。
俺もその輪の中に入る。
打ち上げ花火は……星空に栄えて、とても美しく──なんかなく、どれも、不発だった。
確認するのが全員怖かったので、バケツゆきである。
すまん、愛実……。
心の中で、謝っておいた。
花火があまりにも盛り上がり過ぎた為、みんなヘトヘトで、結局部室にあるマットレスに雑魚寝する事になった。
まあ、たまには合宿ってぇのもいいもんだな。
窓から見える星と、みんなの寝息がマッチして、思わず青春というものを感じてしまった。
翌朝、清香が人形を自宅の神社に連れ帰った──という事だけ報告しておこう。
青春だけで終わらないのが、流石我が部である。
ちなみに──清香曰く、昨日の夜にやっぱり「アレ」が出たらしく、金縛りと恐怖に必死に耐えながら、とりあえず人形の中に入ってくれと嘆願したらしい。
なんとも涙ぐましい後日談であ、る──
「おぉ。呪いのビデオ見忘れてたのぉ」
「放送禁止のビデオもありますですよー!!」
「あー、放送禁止とかなら見たいわー」
「おまえらオカルトから足洗え、ばかやろぉおおお!!!!!」
今日も俺の絶叫が部室に響く。
あぁ、早く部長に「演劇スイッチ」入んないかなぁ……。
まあ、こんな緩い空気の部室も、嫌いではないんだけど……な。
終
演劇部の部室に「アレが出る」と聞いてから、正直俺はびく
ついていた。
夏が迫ってきて、期末テストなんてめんどくさくも胃の痛い行事も無事に終わり、あろう事か、部長が終業式の日に部員を集めて言った。
「明後日から部室で合宿をするのだぞ!!!」
部長の丸眼鏡は、「不参加は絶対認めん!」という事を物語り、ギラリ、と光っていた。
「むふふ。ビデオカメラなどを用意してきちゃいましたのですっ」
ツインテールに赤いリボン、天パで跳ねた茶色の髪を踊らせながら、後輩の知加子が俺の所にとてとてとやってきた。
「オーブとか映ってたらすごいのですよ!!」
あー……。ここにもいたよ、オカルト馬鹿が。
「環(たまき)ちゃんは、なんだか乗り気じゃなさそうなのですよー。どうしてですかー? いざとなったら助けてくれるはずの『王子様』なのにぃ……」
あぁ、そうだ。
確かに「俺は」この伝統ある雪白女子高校演劇部──唯一の「男役」だ、が……俺だって一応女なんだから、怖いものの一つや二つはある。
「環さんがいれば、恐怖の合宿も大丈夫ですよねっ!!」
ちょっと待て。
巫女服着て、黒髪なびかせながらなんかジャラジャラしたもん振り回してんのはっ……──!
「清香ぁああ!!! お前怖いんなら参加すんじゃねぇええ!!!」
「……え。だ、だって……参加しない方が、こ、怖くないです、か?」
う。
た、確かに……。
うちの白笹部長最強だからな……。
「はっ、馬鹿馬鹿しいっ!」
むぅ。その声は、愛実か。
「合宿すんだろ、合宿ー!! 合宿と言えば! プール! スイカ! 花火! ……と、相場が決まっている!」
「おい待て。なんだその小学生の絵日記の様な相場は……!」
「うっ、うっさいな! 合宿ってぇのはみんなでわいわいやるもんだろぉ?!」
つり目ではあるが、ハーフであるふわふわ金髪の愛実は、見た目からうちの部活のヒロインの座にいる訳だが……性格は、簡潔に言えば「ガキ大将」である。
ドサッ──
長テーブルに、花火セットの山。
おいおいおいおいおい……。
頭痛くなってきた。
「あれ? 花火はいいですけど……マッチとかはないんですか?」
「環がライター持ってるっしょ」
「持ってねぇええ!!!!」
そんな印象を後輩に植え付けるんじゃぁない!
「皆の者集まっておるか、大概暇人じゃのぉ」
あんたが一番暇人だっての。
てゆか、半分はあんたが怖くて集まったんだが……。
意気揚々と日本人形、鏡三つ、呪いのビデオなどなどを取り出す白笹部長。
髪は肩までの栗毛色で、見た目はそんなに悪くないのだが……この人の独特の感性についていけるものは、少ない(演劇のシナリオや演出にだけ発揮できるものと見てよし)
「おー、マッチあんじゃん! 部長! 花火しようぜ! 花火!!」
「ばっか!!! マッチは花火の為に持ってきたのではないっ。……これだこれ!」
と、
部長が取り出したるは、……白い、ロウソク──百本。
この人本気で百物語やる気だぞ、おい。
だ、誰か止めなければっ!!!
「おー。本格的ですー! 僕の用意したこっくりさんの紙なんて不用だったですねー」
「こっくりさんか。うむ。試してみてもいいぞ。あ。でもあれの本格的なやり方がそういえばあったな、……酒がいった様な気もするが……」
「花火ー!!!」
「お酒の代わりにこのお人形さんを置いてみてはいかがでしょう?」
「うむ、いいな。その後はしめ縄などが必要だったはずだがのう。……残念だ」
愛実の叫びは、オカルト好きの二人にかき消されてしまった。つーか限りなく無視に近い。
どっちかと言われれば、俺だって愛実の言った様な……ごくごく平和的な合宿をしたい。
演劇部──の合宿では最早ないけどな……。
「誰かに『一人かくれんぼ』やってもらいたいですー!」
「それは環にでもやってもらおうかのぉ……」
まってぇええええいいいい!!!!!!
「なんだ、そのなんか『一人』とか、なんかすっごく怖い響きだぞ!!!」
「怖いですよー。実況スレッドとか本当に出てきたりしてたですよー」
「あんなのは、釣りだろう?」
「えー。でも塩水含み忘れて明け方までガクブルしてた人のスレッドは怖かったですー」
「まあ、一人かくれんぼは浴槽がないしな……また今度やるとしよう」
よ、良かった……。
危うく、なんかすっげぇ怖い呪術の餌食になるとこだった……。
てか塩水とか浴槽とかなんだよ……。
さ、寒気……。
「部長、俺悪寒がしてきたので帰ります。風邪かなーぁ」
「そうか。じゃあ『一人かくれんぼ』を実況するように。やり方が分からないなら事細かにメールしてやろう。これは部長命令だ」
鬼だ……、本物の鬼がここにいる……。
がっくりうなだれてる俺の肩を、愛実が叩いた。
「あのさー、きたろーの親父見てたらさぁ、目玉焼きにしたくなんね?」
鬼部長と鋼鉄のハートを持つヒロイン……。
まともなのは、俺、一人?
泣きたい……。
百本のロウソクは当たり前だが、用務員のおじさんに見つかって没収されてしまった。マッチもだ。
薄暗くなってきた部室……。
テーブルの上には、こっくりさんの紙と、日本人形と、さっきコンビニで買ってきた(というか、外見でいける! と、買わされた)ワンカップの酒を用意して、部員全員ゴクリ、としている(愛実だけは平然としていたが……)
「では、行きますですよー?」
知加子が十円玉を手に、キリリと全員を見回す。
可愛い丸文字とハートが無駄に飛び交っているこっくりさんの用紙は低級霊すら呼べないんじゃないか、と少し思ったが……何しろ部長が持ってきた日本人形が怖すぎる上に、その後ろにあろう事か、鏡を三つ立てて三面鏡にしている。
それだけで、ハッキリ言って、怖い。
こっくりさんなんてしなくても、これだけで何かを呼べそうだ。というか、もうなんかこの人形の中に何か入ってるとしか思えない。
「じゃ、全員指を出せ、十円玉の上に置くがいい」
部長命令の元、知加子、清香、俺、愛実、部長──全員の指が特大ハートの上にある十円玉の上に指を置いた。
「う、うぅ……や、やっぱりやめましょーよー」
「神社の娘だと言うに、何を怖がっておるのだ清香」
「じ、神社の娘だからこそ、怖いんです……」
清香がちらちら見てる日本人形──もしかしたら、あれ、ホントに何かの曰くがあるんじゃないか?
無駄な冷や汗をかきながらも、知加子が唱えだしたので、全員つられて「こっくりさん」の名前を連呼し出した。
「降りてきたら返事して下さいです」
十円玉が滑らかに動く、全員が「おぉおっ!」と声を上げた。
答えは「はい」だった。
「で、何を聞こうかのぉ?」
部長の身も蓋もない一言に、全員が絶句した。
「人形に降りてきてもらうとかですかねぇ?」
知加子ぉおおお!!! それだけはやめてくれぇええ!!!
俺と同じ様に清香もぶんぶんと首を振っている。
「こっくりさん、これから何やったらいいですか?」
オタオタしている俺たちを尻目に愛実が聞いた。
十円玉は、するする動く。
「は」「な」「び」
したり顔の愛実を見て、俺はほっとした。
なんだ、そうだったのか……。
「んじゃ、とっとと帰って下さい」
「わ」「か」「っ」「た」
「はい帰ったー!!! 花火すんぞ! 花火!!!」
「ちょっ! 愛実先輩ずるいですですー!! これじゃあホントのこっくりさんじゃないですよぉ!」
「うっさい。狐は帰った。さぁ花火をやろうじゃないか」
あ。こっくりさんが「狐」だっていう知識はあったんだな、一応……。
てゆか……花火の量、増えてないか?
「れっつ! 花火!!!」
愛実の一声で、オカルト好き二人も渋々首を縦に振った。
全く、「ガキ大将ここに在りき」だな……。
校庭に出ると、外は真っ暗だったが、星がスゴかった。
「うおー、すげぇー!」
思わず感嘆の声を漏らすと、知加子がつつつつ、と俺に寄ってきて、いきなり腕を組んできた。
「……は?」
「知加子、夢だったんです!! 星空の下で王子様と二人きりー!!」
いやいやいやいやいやいやいや。
ちょっと待ってくれ。
確かに俺の外見はいわゆるヅカっぽく見えるだろう。
親衛隊もあるし、いやな、だからと言ってな──まさかの伏兵だ。親衛隊も見つけたらダッシュで逃げていたと言うのに……。
ボコッ!
いきなり、打ち上げ花火の筒を投げつけられ、顔面にヒットした。
更にどんどこそれらがこっちに降ってくる。
「ま、愛実ぃいいい!!!」
「打ち上げ怖いから、環つけてー」
さっきのコンビニで買ったのだろう。全く用意周到である。
最後に投げつけられたライターを受け取ると、俺は打ち上げ花火を並べ、一つずつ、ライターから火を点けた。
「上がるぞー!!!」
いつのまにか、みんなと一緒にわいわい花火をしていた知加子もこちらに振り返った。
俺もその輪の中に入る。
打ち上げ花火は……星空に栄えて、とても美しく──なんかなく、どれも、不発だった。
確認するのが全員怖かったので、バケツゆきである。
すまん、愛実……。
心の中で、謝っておいた。
花火があまりにも盛り上がり過ぎた為、みんなヘトヘトで、結局部室にあるマットレスに雑魚寝する事になった。
まあ、たまには合宿ってぇのもいいもんだな。
窓から見える星と、みんなの寝息がマッチして、思わず青春というものを感じてしまった。
翌朝、清香が人形を自宅の神社に連れ帰った──という事だけ報告しておこう。
青春だけで終わらないのが、流石我が部である。
ちなみに──清香曰く、昨日の夜にやっぱり「アレ」が出たらしく、金縛りと恐怖に必死に耐えながら、とりあえず人形の中に入ってくれと嘆願したらしい。
なんとも涙ぐましい後日談であ、る──
「おぉ。呪いのビデオ見忘れてたのぉ」
「放送禁止のビデオもありますですよー!!」
「あー、放送禁止とかなら見たいわー」
「おまえらオカルトから足洗え、ばかやろぉおおお!!!!!」
今日も俺の絶叫が部室に響く。
あぁ、早く部長に「演劇スイッチ」入んないかなぁ……。
まあ、こんな緩い空気の部室も、嫌いではないんだけど……な。
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